洗練されたデザインと現場

最終更新日:2020.01.14

福井支店工事課の稲坂です。本年もどうぞよろしくお願いします。

昨年につづき、北陸の冬とは思えないほど雪の少ない正月でしたね。
現場を進めるにあたってはとても有難いのですが、
全く降らない…というのも、それはそれで寂しいものです。

雪の代わりに大雨の降る年始、金沢建築館へ行ってまいりました。
2019年の8月にオープンした施設で、工事中から注目していたのですが、
なかなかタイミングが合わず…。ようやく訪問できた次第です。

建物や展示のすばらしさは是非実際に見ていただくこととして、
今回は、職員の方から聞いたお話しの内容について書こうと思います。

とても気の良い方で、閉館時間を迎えるまで話しこんでしまったのですが、
私が住宅関係の職で、現場監理や設計の仕事をしていたことを伝えると、
施工時の現場の様子や、職人さんから聞かれた話なども伺うことが出来ました。

端的に言ってしまうと、関わった職人さんが非常に苦労されたという話です。
「水盤のタイルは1mmのズレも許さず水平を保つ必要があった(少しでも高低差があるとそこから水が零れるため)」
「タイルの目地が極めて細く、僅かなガタつきも許されなかった。また、その目地を畳の位置と合わせる必要があった」
「天井の化粧垂木は、細く繊細に見せるために一本一本すべて面取り(部材の角を斜めに落とすこと)している」
「畳の縁が太すぎたために、すべて作り直して入替えた」などなど…。
設計をやっていた立場からすると、どれも納得できる内容ですし、とても勉強になりますが、
中には必要性に疑問も抱きながら作業されていた方もいらっしゃったのではないでしょうか。

その職人さん方の汗と涙に報いるのは、非常に難しい施工をやり遂げたという達成感、
そして全国各地の人に愛される建物に携われたという喜びです。
オープンから半年強しか経っていない施設ですが、
「とても落ち着くから」と、東京から何度も足を運んでいる方などもいらっしゃるそうです。

自分の行った仕事が、そうして多くの方に大切にされている・大きな価値になっていることが感じられたとき、
困難を乗り越える何よりの原動力になるのではないでしょうか。
私たちの仕事は、お客様ひとりひとりに喜んでいただくことが目的ですが、
それはお客様のためだけではなく、携わったすべての人のためでもあると再認識しました。
私たちがお客様からいただく感謝の言葉や、現場を見られたときの喜びの表情も、
できる限り職人さん達に伝えていかなければと思います。

さて金沢建築館の方ですが、今の企画展は2月16日まで。
その後は3月20日から、「日本を超えた日本建築」がはじまります。

そうそうたるメンバーで…!すでに楽しみです。
桜が蕾をつける頃、再び足を運ぼうと思います。