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さよならだけが人生だ

『五言絶句』

中国・唐の時代に完成した近体詩のひとつで、五言(五つの漢字)を絶句(四つの行)で表現するものです。漢文に興味があったわけでもなく、むしろ苦手であった私ですが、30数年前、ちょうど大学生のころに、ある雑誌で「五言絶句の“意訳”」を読むことがありました。 

ならんだ二十文字の漢字では何のことやらさっぱりわからないのに、意訳された文章と重ねると何となくその詩の意味が伝わってくるのです。

今でも思い出すくらいに印象に残ったのは、井伏鱒二の意訳を代表する作品。とても有名ですからご存知の方は多いかもしれません。 

 

『勧酒』(酒を勧める)

勧君金屈巵(君に黄金の杯を勧める)

満酌不須辞(このなみなみと注がれた酒を断ってはいけない)

花発多風雨(花が咲くと雨が降り、風も吹いたりするものだ)

人生足別離(人生に別離はつきものだ)

 

于武陵という作者がつくったこの詩を、井伏鱒二は次のように表現しました。

 

『勧酒』

勧君金屈巵 この杯(さかずき)を受けてくれ

満酌不須辞 どうぞなみなみ注がしておくれ

花発多風雨 花に嵐のたとえもあるぞ

人生足別離 さよならだけが人生だ

 

いちべつすれば、人生は別れの連続だということを言っているのだととらえることができますし、人生とは嵐の前に散ってしまう花のようにはかないものだと読むこともできます。

 

ところが、井伏鱒二の意図するところは、そうではなかった。

『人生に別れは必然のものである。ならば、今、この瞬間を大切にしよう。最初で最後かもしれない、この出会いを大切にしなければならない』

一対一で酒を酌み交わす情景が広がります。 

 

そして、ちょうど季節は12月。私が責任者をつとめる大学3年生を対象とした新卒採用活動が始まるタイミングです。中小企業の大苦戦が当たり前となったこの時期に、来春8名の学生が入社の意思決定をしてくれました。これは、新卒採用ワークショップの尽力を先頭に、会社全体で学生をお迎えしようという姿勢が伝わった結果だと実感しています。

 

しかしながら、さらに強まる採用活動への逆風。厳しい状況のその先が見えないというのも正直なところです。

 

わたしたちができることは何か。

さまざまな取り組みを通して、学生と接する時間を、その一瞬一瞬を大切にすることから始めなければならないということだと思いました。

 

『花に嵐のたとえもあるぞ さよならだけが人生だ』 

 

シューカツに臨む真剣なまなざしに応えられるのか。

厳しくも楽しい時間が始まります。

 

総務部 見角勝弘