山海 満也
アルスホーム株式会社
代表取締役社長
山海 満也

大事な課題

  • 社長メッセージ
最終更新日:2019.11.19

皆さんこんにちは。

いやはやたくさん雪が降りましたね~。
雪に慣れている北陸の人たちも一気にあれだけ降ると参ります。

通勤や帰宅、帰宅されてからの除雪等かなりお疲れの週末では?
疲れを癒し有意義な週末としてください。

さて話は変わりますが、今年の朝日新聞グローブの表紙です。



この記事によると「今、生まれた赤ちゃんの二人に一人は100歳まで生きる」そうです。

いつしかのブログにも書きましたが私の年齢は今年で48歳を迎え、住まいは築21年目になります。

住まいはメンテナンスを適切に施しながらここまで生活していますので、快適ですしまだまだ持ちそうです。

しかし、100歳まで生きたとした場合あと50年持つか?と問われるとかなり手入れをする必要性が
見えてきますし、他の課題も浮かび上がります。

例えば現在は庭の手入れは自分が適宜手を加えてメンテナンスしていますが、小さい庭とはいえ
70歳、80歳になったときには脚立に上れるか怪しいものです。転落事故のリスクも高まります。

幸い21年前とはいえ、当時の水準としては断熱気密性能はハイエンドの性能だったので
現在でもかなり快適な空間となっています。

しかし、あと50年を考えるとサッシそのものの耐久性が気になりますし、屋根等のルーフィングや
瓦も交換が必要になります。ウレタン断熱の性能低下を補うために外張りの付加断熱も必要かもしれません。

いずれにせよあと50年の暮らしを考えると家をもう一回建てるか、それ相当のメンテナンスが必要です。

この視点で考えると現在進められている施策も疑わしいものがあります。

国の施策としてスクラップ&ビルドを反省し中古物件の流通を高める努力がなされています。

しかし、優良な中古物件だとしても100歳まで生活できるかと問えば、極めて難しいというのが私の見解です。

いくら断熱材を付加しても気密および計画換気は正常に機能しませんし、構造躯体そのものと
施工時の品質マネジメントまで踏まえると100歳まで安心快適に過ごせる「優良物件」は
無いに等しいと考えるべきです。

例えば30歳で築15年の住まいを購入したとしたら、築30~40年を経過するあたり 、
住まい手が45歳~55歳あたりから多額のメンテナンス費用が必要となります。

その状況から更に100歳まで生活するとなると築85年まで使用する計算になります。

社会保障が減少する中で、生活しながら50歳前後から発生する50年間の多額のメンテナンスが出来るのか?
更に70歳でリタイヤして収入が無い中30年間メンテナンスできるかを考えると末恐ろしい気がします。

住宅業界では20年保証や30年保証を謳う会社が多いのですが、そろそろ視点をもっと先において
住まいというものを設計する必要があると思います。

35歳で家を建てる場合、100歳までの65年間のメンテナンス、家庭内の事故リスク
さらには老後夫婦二人ないし、一人になったときの住まい方とマネジメントまで考えなければいけません。

そう考えると一番重要なのは構造躯体の堅牢さと現場での実際品質の確保です。
これについては詳細は割愛いたします。

二つ目に重要なのは奇をてらわないシンプルで大らかな間取りです。家族構成の変化を受け止め
小さくくらすことも可能な空間構成は増改築のコストを低減できますし、住んでいて快適です。

若いときの生活だけを考えてテクニカルな間取りや意匠を採用すると後々後悔します。

他にもいろいろな住まいの「長寿ファクター」はありますが、もうひとつだけ挙げるとすれば、
住まい手がマメに手入れをして「荒れさせないこと」に尽きます。

実際の定期的なメンテナンスも当然大事ですが、日々の暮らしの中で住まいに注意を払い、
整えて暮らす、「住まい手の心のありよう」がとても大事だと考えます。

メタボにならないために適切な運動習慣を持つのと同じです。
日々の努力を怠ると、後になって支払う代償は大きいものです。

いずれにしましても、住まいの創り手側としては、100歳時代を見据えて正しい設計をお客様に
提供すると同時に、将来を見据えた正しい住まい方もお客様に提案する必要性を強く感じています。

100歳時代を迎える今、建築時のハードがしっかりしているだけでは乗り切れません。

これから建てられる方も、建てて住まわれている方も100歳まで具体的に考えられてはいかがでしょう?

長生きはめでたいのですが、大変な時代になってきたなというのが私の感想です。

これも我々に与えられた課題と捉えて解決に向け努力したいと思います。