「和風」と「洋風」
旧く昭和の時代から現在まで、住宅を表す言葉の一つとして、「和風」と「洋風」というものがあります。
今や「和風住宅」というと、身近なイメージは無く、旅館のような、少し非日常感すら感じられますが、もうひとつの「洋風住宅」とはなんでしょう。
おそらく、戦後徐々に生活が豊かになる中で、いわゆるハウスメーカーが更なる「あこがれ」や「豊かさの象徴」として、欧米の住宅のイメージを分かりやすく表現したものが、「洋風住宅」の始まりではないかと思われます。
さすがに昨今、直接的に「洋風住宅」という表現はしませんが、諸外国の地域名を使用した、「〇〇海岸風」や、「〇〇テイスト」というスタイルは実に様々、多くの住宅商品や選択肢があふれています。
そうした住宅商品は、情報がフラットに取得できる現在、目指す地域の家づくりとの差分を詰めることにより、ある程度リアルに模倣できるようになってきています。
興味深いのは、そうした家であっても、間取りの一部には和室があったり、当然玄関では靴を脱ぎ、ソファを背もたれに床に座るという、暮らしのスタイルと整合性が無いものも多く見受けられます。
こうした「〇〇風」や、「〇〇テイスト」といった家づくりには、未だ諸外国への「あこがれ」から抜け切れない様子がうかがえます。
本来、住宅のスタイルとは、その地域性、気候風土、美意識によって確立されます。
それは、「和風」でも「洋風」でもなく、私たちが「普遍的」に感じる「日本人としての美意識」を洗練されたかたちで表現することが、本質ではないでしょうか。
住宅とは5年10年で買い替えるものではありません。
住宅とは永い年月を経て、家族との暮らしの記憶を積み重ねていきます。
その為には、どの時代においても価値が色あせることのない、「普遍的」な美しさが、永く愛着を持てる住まいのとして、必要なことだと考えます。