「時の家」を読み、住まいと向き合う
こんにちは。第1詳細設計の平岡です。

寒さの中にも春の気配が感じる季節となりました。寒暖差の大きい時期ですので、どうぞご自愛ください。
先月、第174回芥川賞を受賞された鳥山まことさんの「時の家」を読みました。
とある木造平屋のはじまりから終わりまでを、3組の住まい手の記憶とともに描いた作品です。登場人物それぞれの感情が丁寧に綴られていますが、読み進めるうちに私は自然と“建築”そのものに気持ちが向いていました。
白い漆喰の壁に残る窪み、寝室のシナ合板の天井、空間に刻まれた小さな痕跡。経年変化を重ねながらも静かに佇み続ける家と、移ろいゆく住まい手や時代との対比が印象的でした。作者が1級建築士としてお仕事されていることもあり、素材や納まりの描写が具体的で、描かれた空間を思い浮かべながら読む時間は、建築に携わる者としてとても興味深い体験で、図面を見るときの自分の視点と重なる場面がいくつもありました。
特に心に残ったのは、最初の住まい手であり設計者でもある男性のエピソードです。室内の籐巻き柱は、施主から大工、現場監督、左官屋、石屋、家具屋、建具屋、塗装屋、設備屋、庭屋と、この家に関わる人々が順に籐を巻いて完成させたものだと語られます。それぞれが想いと責任を込めて手を加えていく姿に、私はアルスホームの家づくりを重ねました。
私たち設計が図面に込めた意図は、現場の職人の皆さんの確かな技術によって形になります。その積み重ねがあってこそ、お客様の大切な住まいが完成します。家づくりに携わる業者の皆さまへの感謝と、この仕事への誇りを改めて感じました。
作中に心に残った一文を引用します。
『「意匠」という言葉があります。「意」とは心を意味する語であり、「匠」とは形づくることを意味する語。つまり「意匠とは心を形づくるもの」。』
この言葉を胸に、これからも一棟一棟の家づくりに真摯に向き合ってまいります。