問いを立てる力

最終更新日:2025.11.21

こんにちは。設計課伊藤です。
先日、富山県美術館で開催されている「DESIGN with FOCUS デザイナーの冒険展」に足を運びました。

この展覧会は、現代社会の課題(環境問題、技術の進化、伝統文化の継承など)に対して、11組のクリエイターたちが「デザイン」という手法でどう向き合っているかを紹介するものです。

私が最も感銘を受けたのは、彼らが皆、既存の枠組みを鵜呑みにせず、「そもそも、これって何のためにあるんだっけ?」という根源的な「問い」から出発している点でした。

住宅設計の仕事も同じです。お客様の要望をそのまま形にするだけでなく、「なぜ、その要望に至ったのか?」という背景にあるライフスタイルや価値観を深く掘り下げることが、本当に良い住まいづくりには不可欠です。この展覧会は、その「問いを立てる力」の重要性を再認識させてくれました。

また、住宅は人生で最も大きな買い物の一つです。短期的な流行に流されず、何十年経っても飽きがこない、愛着の持てる「ロングライフデザイン」が求められます。これは、単に頑丈な家を建てるということだけでなく、素材選びやメンテナンスのしやすさ、将来的な間取りの変更の柔軟性まで含めた、広い意味でのサステナビリティに通じます。彼らの作品は、そのバランス感覚のヒントを与えてくれました。

特別展示されていた鈴木啓太氏によるJR城端線・氷見線の新型車両「KASANE」のデザインは特に興味深かったです。単なる移動手段としての機能だけでなく、沿線の豊かな自然(散居村や富山湾の風景)と内装デザインを繋げることで、「内と外との一体感」や「地域への愛着」を生み出そうとしています。

これは、住宅設計における「借景」や「内と外のつながり」の考え方に応用できます。いかにして周辺環境を取り込み、住まい手がその土地に根ざした暮らしを実感できるか。公共性の高いデザインからの学びは、住宅というプライベートな空間を設計する上でも非常に有効だと感じました。

「デザイナーの冒険展」は、凝り固まった常識をほぐし、新たな視点を与えてくれる貴重な機会でした。

私も設計者として、もっと「問い」を深め、お客様にとって本当に価値のある、そして未来を見据えた住まいを提案できるよう、今回の冒険で得たインスピレーションを日々の仕事に活かしていきたいと思います。