住まいの起点

最終更新日:2025.12.01

住まいづくりを考える時、まず何から始めるべきでしょうか。
住宅展示場へ行く、雑誌やSNSで情報を集める、予算の計画を立てる。
どれも必要なことですが、情報の波に揉まれるうちに、「何が正解なのか」が分からなくなってしまうことがあります。

耐震性能や断熱性能といった数値的な安心、効率的な家事動線、流行のデザイン。
それらは確かに家を構成する大切な要素ですが、全てをパズルのように組み合わせるだけでは、どこか満たされない感覚が残ります。
人の感じ方とは不思議なもので、客観的な理屈や理論上の正解を必ずしも「自分の正解」とは受け取ることが出来ないようです。

何故なら、それらの正解は、暮らす人の「心」の置き所とは少し違う場所にある話だからです。
住まいとは、暮らす人の個性、すなわち暮らす人の感受性を通して、その固有性を形づくります。

家づくりの起点を、もっと個人的で、感覚的な部分に置いてみてはどうでしょう。

例えば、休日の朝、窓から差し込む光の角度に幸せを感じたり、
使い込んだ家具の肌触りに、ある日ふと新しさを感じたり、
あるいは、静けさの中に響く雨音に安心感を覚えたり。

そうした、理屈を超えた身体的な感覚、極めて主観的な感性こそが、その人らしさの原点であり、住まいづくりにおいて最も信頼できる羅針盤となります。

客観的な正解を外に求めるのではなく、自分の内側にある「心地よいと感じる感性」に耳を澄ませる。

あやふやで、あいまいで、形のない感覚を深く見つめ、一つひとつ丁寧にすくい上げ、カタチにしていくこと。
その過程が、住まいづくりの始まりであり、長く愛着を持って住み継ぐための始まりでもあると考えます。

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